EXWのチラ裏

遊戯王マスターデュエルチームEXWメンバーが気ままに書くブログ

先攻番長讃歌

DCも終わり、次回のDCも少なくとも6月以降であると考えられる Season 28。マスターデュエルにとって凪の期間とも言える今期、各所で普段より景気の良い連勝を見ることが多く感じる。

普段だと10連勝もしているとそこそこ上質なリストだと認知される傾向にあるように感じるが、今期は10連勝のリストが跋扈しており、私自身も手応えとして「10連勝くらいであれば、適当に潜っていれば割とすぐ達成する」程度であるように感じられた。動画投稿するときにサクッと10連勝を載せられるのはありがたい限りである。

私はこの状況を「環境におけるゲームの再現性が高まっている」と認識しており、その要因は「先攻番長の不在」によるものであると理解した。

執筆時点で少しずつこの潮流が変わりつつあることも踏まえ、この環境が何を意味するかを語りたいと思う。

Season.28 のデッキ分布の実態について

まずは今期の現状をおさらいしたい。

基本的には 2024 MAR の DC の環境がベースとなっている。DC は【スネークアイ】と【超重武者】の2つのデッキがメタゲームの中心となり、以下のようなデッキが幅広く分布していた。

※ 今回は格付けが目的ではないため、銀以上の結果から「一般的なデッキ」をTier1に、いわゆる「職人デッキ」をTier2に置くのみとしている。

このうち一般的なデッキの中では圧倒的な封殺盤面を作ることができるデッキは【超重武者】だけではなく、手札の配牌格差は前提としつつ、繊細なプレイの差が結果を分ける環境であったと言える。

ここから大きな規制もなく、新規カードで環境に顔を出すデッキが増えた結果、Season.28 では以下のような状態となっている。

後述するが新たな番長として【ピュアリィ】の分布が増えつつあるものの、新規実装のテーマが増え、環境から【超重武者】が姿を消した状態となっている。

特に新規テーマ補正もあり【R-ACE】の人気が非常に高く、こちらも各種誘発への耐性や動きの柔軟性は高い一方、最終盤面は完全封殺を目指すわけではないため、総合すると環境全体の速度感は DC より更に落ち着いたと言えるだろう。

【超重武者】の消滅について
今回の本筋から逸れるため補足程度であるが、超重武者が姿を消した理由は

1. DC 後改訂がまだ実施されておらず、そのタイミングでデッキが再構築不可能になるリスクが有るため今使う理由がないこと
2. 作業色が強いため、 DC のような本気で勝ちに行く環境以外で使うのは退屈であるから

の2点が理由であると考えられる。
デッキパワーとしては引き続き Tier 1 であり、ただメタゲームからのみ姿を消したというが正しい現状把握と言えるだろう。

easy win が望めない環境

この分布実態を俯瞰してみると、どのデッキも以下の2点が共通していることが見て取れる。

  • 「誘発受けが非常に良く、誘発1枚で簡単に止まってしまうということが起きづらい」
  • 「最終盤面が妨害よりリソースに寄っており、リソースを伸ばすこと・ライフカットを拒否することが重要視される」

これはつまるところ easy win をしづらいということを意味しており、「先取ったから勝った」「相手が泡1枚で止まって初動を叩きつけたら勝った」というゲームが存在せず、最低限の手札の点数の壁を越えさえしてしまえれば、全てのゲームが一定以上の練度の勝負になることを意味している。

先を取れたかどうかや、素引き前提となる特定の手札誘発を引き込めたかどうかに依存せず、よりギミックを太く長く回せたほうが勝利する。そんな環境と表現できるのではないだろうか。

となると、今月連勝が伸びやすい理由も納得できる。

特に新弾前は事前知識の差や練習量によって練度の差が開きやすい期間であり、そこに先攻番長とクリティカルな手札誘発という不確実性がなくなった結果、「どのデッキを使っても練度の低い相手には事故らなければ勝ててしまう」環境が到来した。

これこそが各所で10連勝の報告が散見される理由だろう。

バイ-Qを手札から捨てたくはないか?

ただ、それで良いのだろうか?

先攻番長というのは、遊戯王の魅力の一つであり、厳しいこの世界に与えられた福祉の一つである。

番長になる決意を固め、コイントスで表を取り、バイ-Qを手札から捨てる。それだけで乗り手が初心者だろうが熟練者だろうが関係なく、最強の決闘者になれる。50%の確率で成功体験を積むことが可能だ。

暇な時間はランクマに潜り、ルムマや大会を見つけるとすぐに参加し、DCには余暇のすべてを捧げる。そんな人でなくとも、成功体験を得ることができ、このゲームを長く続けるモチベーションを与えてくれるのが先攻番長である。

先攻番長が消えてしまうと、ストイックに遊びたい一部の層以外にとって、このゲームはつまらないものになってしまわないか?

そんなゲームとなってしまった先に未来はない。熟練者以外寄せ付けないゲームにしないためにも、今こそ「ギミックで捲れるから」を言い訳にデッキ枚数を43枚や44枚にしているR-ACEに、正義のイワトオシ召喚で対抗すべきなのではないのだろうか?

そうすることで、この実力差で全てが決まる環境は是正され、デッキ枚数が40枚に近くなることで増殖するGを見る機会が増え、カラミティは禁止され、平和は訪れるはずである。

「どれだけうまいやつでも相手が初動と指名者があれば負ける」ゲームであることは、同時に「どれだけ初心者であっても初動と指名者があれば勝てる」ゲームであることも示している。

そんなデッキが Tier 1 であり続けるのはたまったもんじゃないが、少しくらいはそんなデッキがあることも、ゲームの間口を広げることに貢献していると私は思う。

終わりに

この記事を書こうと思い立った日の夜、最近流行りつつある新たな番長デッキであるところのゴスピュにFAダブノア突破できるわけもなく負けました。

クリティカルな誘発が初手5枚にないと負けのデッキ相手の後手、しんどすぎる。