EXWのチラ裏

遊戯王マスターデュエルチームEXWメンバーが気ままに書くブログ

「『現代デッキ』なら2誘発は貫通したい」

書いた人: @potato4d

最近のOCGの調整窓で流行しているワードであるが、これは現代遊戯王をプレイするにおいて最低水準であると考えている。

元々は私がデッキ構築をする際において「平均的な初手の基準をどうすべきか」で定義したものであるが、最近では調整の際の基本方針となりつつある。

半ばスローガンと化してきている気がしないでもないが、なぜそう考えたのか、現代において勝ちきれるデッキとはどういうものなのかをここに綴ろうと思う。

MDは対戦単位ではBO1、DCなどの実態としてはサイドなしBO301とも言えることから、OCGより構築が先鋭化されていく傾向にこそあるが、軸自体は両者において大きく変わらないため特に区別せず言及する。

現代デッキの構造

12期の遊戯王のデッキは「コンパクトなギミック」と「広い自由枠」で構成されている。

特に【スネークアイ】はその筆頭と言えるだろう。
例として私が今年3月のAREA CHAMPIONSHIP 2023(公式の大型大会)にて 5-1 にて入賞したリストをベースとして言及する。

このリストを俯瞰してみると、固定枠とも言える指名者を除いたギミック外の汎用枠はうらら3/G3/泡3/ヴェーラー1/一滴2/三戦1/反逆1/シルウィア1で計15枚にものぼる。

この環境ではスネークアイと粛声が二大分布であったことからメイン戦からピーキーな札が採用したが、より誘発に特化して組み上げる場合は一滴以降の枠も全て手札誘発にすることも可能である。そうでなくとも、少なくともヴェーラー3枚採用の12枚ラインからスタートすることは珍しくない。「2誘発所持が最頻値」である13枚のラインに到達しているようなリストもメジャーである。

更に後攻でのサイドチェンジではニビルやドロール、クロウ等といった対面によって仕事量の傾斜があるカードも増えてくる。そうすると16枚のラインすらも超えてきてしまう。

結果、現代トーナメントシーンで活躍できるようなデッキのほとんどは、平均的な手札がギミックが3~3.5枚・誘発1.5~2枚で構成されていることとなる。

つまり、誘発によって刺さりの振れ幅こそあれど、「相手はほとんどのケースにおいて何らかの手札誘発2枚と初動を持っている」ことが前提であると言えるだろう。

「2誘発で沈んだ」は上振れや下振れではない

となると「うららと泡で動けず負けた」ような試合は、もはや相手の上振れや自分の下振れではない。

ギミックが3~4枚ある中で誘発2枚を超えられないということは、手札にあるギミックのカードやEXデッキのカードが「初動の役割はあるが貫通札の役割を持てていない」や「実質的に同じ名称を経由するため妨害されたときに別の手数として計上できない」状況に陥ってしまっていることを意味する。

デッキに応じた一撃必殺の誘発がたまたまクリティカルに刺さったならともかく、メインデッキから入るような誘発はもちろん、サイドカードの誘発もほとんどは1:1交換の最低保証ラインを有しており、それらをそれを貫通できないのは引きムラや噛み合いではなく、デッキの構造の問題である。

現代遊戯王は先にリソースを伸ばしたほうが順当に勝つリソースのゲームの中で、自分だけ 1:1 交換を喰らってギミックの札を抱えて動けなければ手札が1枚多い後攻が貫通してしまって敗北するだけである。

「2誘発が飛んでくる前提」でデッキを作る

そのため、そもそもデッキリストを作る段階で2誘発を超えたうえで最低限展開を通し、自分のリソースを伸ばし切ることを意識する必要がある。

この構築思想を体現しているのが、件の調整窓に存在する友人が実際に先日、OCGのCSにて優勝した【スネークアイ】のデッキリストだ。

スネークアイはデッキ特性からギミック内では2誘発の貫通が難しく、超えられるかどうかはギミックの上振れや、EXデッキから手数を伸ばせる「霊使い」の発動条件依存であることがほとんどであった。

この構築では標準的な手札誘発12枚をしっかり抑えつつ、初動と貫通札を兼ねる《パラレル・エクシード》や《スモール・ワールド》、そのスモワの中継点と貫通札を兼ねる《EM:Pグレニャード》が採用されている。

これによって霊使いや上振れに依存せず、また『スネークアイ』名称の名称ターン1の消費とは別軸で動くことにより、安定して2誘発を貫通したうえで【スネークアイ】としての展開が成功するような作りであると言えるだろう。

もちろん、初手の配牌に依存しないEXデッキ側で手数を自動的に伸ばせるのが理想ではあるものの、現実的に炎属性のプールで実現可能なカードは「霊使い」と《賜炎の咎姫》に限られるためメインデッキから対策を打ったリストとなる。

実際この日彼は先攻選択権のサイドチェンジ中の引き分けを含む 5-1-1 の好成績、先攻選択権で負けた試合は1シングルだけということからその安定感が伺える。

結論: 誘発貫通は構築段階で対策しよう

そんなこんなで、現代デッキは3枚のギミックと2枚の誘発という配牌をベースにデッキが組まれている。

その世界において2誘発というのはもはや当たり前の存在であり、うらら/Gの相殺関係や指名者などのイレギュラーな存在があるにせよ、まずはギミック内で2枚を安定して貫通できることが新しい現代デッキのスタートラインであるといえるだろう。

展開が通ったときのリターンは高ければ高いほど良いことであることは間違いないが、一方で展開の成功のための要求値が飛躍的に向上していることは忘れずに構築していきたい。